最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)774号 判決 1973年9月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人大沢憲之進の上告理由第一点について。
所論の主張につき原審が判断を示していることは原判文上明らかであり、本件記録に徴すれば、原審に所論審理不尽があると認めることはできない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点について。
手形債務を主たる債務として手形外の連帯保証契約が締結されている場合において、連帯保証人に対し裁判上の請求がされたときは、手形債務についても消滅時効が中断すると解すべきである。けだし、連帯保証人に対する請求は、主たる債務者に対してもその効力を生ずる(民法四五八条、四三四条)から、連帯保証人に対する裁判上の請求は主たる債務につき消滅時効中断の効力を生ずるが、この理は、主たる債務が手形債務であるからといつて別異に解すべき理由がないからである(大審院昭和五年(オ)第一八一一号同六年一月二九日法律新聞三二三〇号一五頁参照)。なお、所論は、手形債務の場合を他の債務の場合と同様に解するのは手形の呈示証券性に反するという。しかし、手形債務の時効中断に手形の呈示を要するものでないことは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和三五年(オ)第五三三号同三八年一月三〇日大法廷判決・民集一七巻一号九九頁参照)、本件のごとく、連帯保証債務の時効中断の効力が連帯債務に関する民法の規定により主たる債務である手形債務に及ぶ場合についても、手形債務者に対する手形の呈示を伴わないことを理由として手形債務についての消滅時効中断の効力を否定することはできない。これと同旨と解される原判決は相当で原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
同第三点について。
所論の点に関する原審の判断は、その適法に確定した事実関係に照らし正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 村上朝一 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄 裁判官 吉田 豊)